雇用契約違反で退職
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雇う方は雇用契約違反をしても許される。
雇われる方は雇用契約違反をすると許されない。
あれは、私が20代の頃でした。
新卒で入社した会社を退職し、無職無収入の時期を3ヶ月ほど過ごした後、地元の二部上場の小売業に転職しました。
求人票には「月給25万~28万」と記載されていました。
当時の地方都市の20代で、これだけの給料は結構な金額でした。
流石、上場企業!と思ったことを覚えています。
私は採用面接を受けて、何とか転職しました。
そして、入社して新人研修を営業部長から受けました。
その後、総務課で入社に関する手続きをしました。
そこで、私の給与金額の欄を見ると「月額18万円」になっているのです。
求人票には「25万円から」と書いてあったので、期待して面接を受けたのです。
これは、いったいどういうことでしょう?
その後、店舗に配属されての研修が始まりました。
そこで、私は会社の先輩に、それとなく給料のことを聞いてみたのです。
そしたら、その先輩は、ただ一言、こう言いました。
「辞めるか?」
次の日、通常通り、出勤したのですが、私だけ店頭に立つことを許されず、掃除を言いつけられました。
その後、しばらくして、初日に研修を受けた営業部長が正午くらいにやってきて、
「オイ、昼メシを食いに行こう!おごってやるよ」
と、私だけを誘って、近くのファミリーレストランへ連れて行かれました。
自分にとっては衝撃的な出来事でした。
世の中の仕組みを少しは理解した気がします。
あまりにも衝撃的だったので、その時の状況を物語の形で、私は書きとめていました。
下記に転載します。
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転載ここから
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最後に一言。
「給料はいくら欲しい」
「求人票には二十五万~二十八万と書いてありましたが--。それだけ頂ければいいと思います」
入社は切りの良いところで月初めとされた。
社員として入社の日、K市にある本部に行き事務室のようなところへ通される。パイプ椅子に座って待っていると奥から社長が出てきた。
会社の生い立ちや何かを説明しはじめる。ひととおり説明が終わった後、給与明細が渡された。あなたの給料は月々、これだけですというわけだ。
前職では冷遇されていたから名目賃金は十六万ほどで手取りは十二万ほどだった。
実家から通っていなければ到底生活していける金額ではない。
龍雄は求人票に記載されていた金額を思い出した。うまくすれば求人票に書いてある最高金額、二十八万円くらいもらえるかもしれない。
龍雄は期待した。
今度こそは、という思いが頭をかけめぐった。
明細票をめくると「高木龍雄様」と書かれている。上から順番に職務手当、基本給、・・・と続き、一番下の欄に「計 十八万円」とある。
求人票に記載されていた最低金額よりも七万ほど低い。これまでの失業生活で無収入の暮らしを送ってきたのだ。わずか一円であっても、ものすごく神経質になっていた。
「ウソだ。求人票の金額と違う」
龍雄は思わず叫んだ。
猿顔にの目の上にへばりついている太い眉毛が毛虫のようにピクリと動いた。
龍雄は納得いかなかった。契約は契約である。求人票には雇用契約条件が書かれているはずだ。もし給料が十八万なら最初から十八万と書いておくべきだ。憤懣やるかたなかった。
その後、下野店に行き普段通りに仕事をした。
納得できなかったので周りの従業員にぶつけてみた。彼らは何も答えなかった。
一週間後、社長が下野店にやってきた。
「オイ高木、昼飯おごってやるよ」
言われるままに店の隣のファミリーレストランへついていった。
社長はなぜか見覚えのある求人票を手にしている。
ウェイトレスがオーダーを取りに来た。猿顔はバナナジュースを注文した。
龍雄は社長より高価なものを頼んではまずいと思いバナナジュースより安いピザセットを注文した。バナナジュースより安い食べ物をメニューのなかから探すのはとても大変だった。
やがてウェイトレスがバナナジュースを銀のトレーにのせて運んできた。ピザセットはまだ持ってこない。
バナナジュースがテーブルに置かれた。
猿に似た生き物は飼い慣らされたチンパンジーのように器用にストローを操りバナナジュースを飲んだ。
グラスの中身を飲み干すと、いつぞやの求人票を取り出して、じっと見ている。
やがて、お猿さんは顔を上げると龍雄を見据えてテーブルに身をのりだすようにして喋りはじめた。
「テメエ、人が善意でアルバイトから社員にしてやったのに会社のなかでウソとかサギとかぬかしやがって、文句あったらヤメやがれってんだぁ。だいたいオマエは・・・・」
「接客もぶっきらぼうで・・・・」
「ウチもあそこで店をやって十年で・・・」
「ウチは上場企業の北見とタイアップして・・・」
「オマエが商品を出したあとは・・・」
「代わりはいくらだっているんだ・・・」
どういうことだ。馘首を切られるということか。
「ア、アノ、・・・・僕はもうおいて頂けないんでしょうか」
畏る畏る訊いてみる。
「言っとくけど、これは解雇通知じゃないよ」
では、何だというのだ。
延々と一人で猿は喋り続けた。僅か一週間ほどで解雇--。
求人票と違う条件を言ってきたのは、そっちじゃないかと言ってやりたかったがどうしようもなかった。労働基準局や職安でゴネてやろうか思ったが、そんなことをする時間と労力があったら次の仕事を探すほうが、より現実的だ。
どこの企業でも三ヶ月間は試用期間だ。試用期間中にクビを切られても、こちらに勝ち目はないだろう。
家族に何と言おうか。定年を間近に控えた父と、いまだ定職に就けない出来の悪い息子の将来を案ずる母の顔が脳裏に浮かぶ。
歯が震えてとまらなかった。安物のカスタネットのような音が小刻みになる。
「ス、スイマセン、煙草吸ってもいいですか」
少しでも落ち着きを取り戻そうと煙草を吸おうとした。
「どうぞ、どうぞ」
勝ち誇ったような猿顔が火を点けてくれた。猿は自分もメンソールに火を点けて、なおも喋り続ける。
そこから先はまったく上の空だった。
また無職、再び失業者に戻るのか。過去の忌まわしい記憶がよみがえってきた。
二丁目の何某が会社を辞めた。三丁目の某がどこの学校へ進学した。角の煙草屋の娘が誰と結婚した。そんなことが、あっという間に広まる狭い田舎町である。
昼間からブラブラしていて近所のオバチャンに陰口をたたかれていた自分。おそらくは親戚付き合いで肩身の狭い思いをした両親。
また履歴書がひとつ汚れるのか。これなら最初から社員になんか、ならなきゃよかった。
出されたピザセットもまったく手をつけなかった。
長崎は三ヶ月、無断で休んでも許されたのに、何で俺だけ・・・。 だいたい俺を切ったら、その穴はどうするつもりなのだ。
ピザセットが運ばれてきた。
まったく手をつける気にはなれない。
途中、何度も洗面所に行った。
「これは夢だ。悪い夢にちがいない」
洗面所で口を漱いで鏡に向かって何度も呟いた。
「じゃあな、ちゃんと食べていけよ」
猿は腹の中にたまっていたものをすべて吐き出すと射精が終わった後のように満ち足りた顔でレジに向かった。
胃の痙攣をおさえるために目の前にある冷めたピザを水で流し込んだ。
再び、 二日後、猿は下野店にやってきた。それでも、それまでは、何食わぬ顔で働いたのだが動揺は隠せない。
猿は不敵な笑みを浮かべている。
有無をいわさず奥の事務所に連れていかれた。
「オイ、それでどうなんだよ」
手には会社規定の退職届けがある。
「書け! 」
エテ公は歯茎を剥き出しにして煙草をくわえて百円ライターで火を点けた。
「早くしろ。こっちも忙しいんだ」
書類を見ると退職理由の欄は、
A 自己都合により
B 会社側の都合により
C 会社側のすすめにより
D 仕事が合わないため本人の希望により、となっている。
「オマエの場合はAだろう。さっさとマルつけろよ」
冗談ではない。そっちのほうから切ってきたのではないか。
こっちにも意地がある。資金と時間に余裕があれば裁判を起こしても良いくらいだ。
さんざん粘ったあげく、Cでお互いに妥協した。
佐藤のときの雇用契約のことが頭をよぎる。
雇う方は契約違反をしても状況が変わったと言えば許されるが雇われる方が契約違反をした場合、黙って切られるしかないのか。
この場合、龍雄の方は契約に違反する行為は何もしていないはずである。
通常の商取引、例えば商品売買契約ならば契約に違反した方が違約金を払わなければならないはずだ。しかし雇用契約に関してはこの限りではないのか・・・。
力なく家路につく帰り道、本屋に入り六法全書を立ち読みした。 六法全書にはこう書いてあった。
労働基準法
(労働条件の明示)
第一五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金に関する事項については、命令で定める方法により明示しなければならない。
前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は即時に労働契約を解除することができる。
第二項をもう一度、読み返してみた。
「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」
労働契約を解除することはできるが会社側に労働契約を約束通り遂行させることはできないのだろうか。その横に小さな文字で書かれている判例には、
求人票に初任給見込額を記載した時は、使用者は初任給確定の際にその額に相応する額を決定するよう努力すべき社会的責任を負うが、見込額を基本給として決定することを保障したものとまではいえない。-八州測量事件-(東京地方裁判所、昭和五四年十月二十九日)(東京高等裁判所、昭和五八年十二月十九日)とある。
これは一体どういう意味なのだろう。求人票に記載されている給与の金額が実際と違っていてもかまわないということなのだろうか。
法律に詳しくない龍雄にはよくわからなかった。
龍雄は再び失業者になった。
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転載ここまで
私は給与に難癖をつけたとの理由で一週間ほどで解雇されました。
結局、雇う方は雇用契約違反をしても許されるが、雇われる方は、雇用契約違反をすることは許されないということです。
シャバは正しいから勝つのではありません。
強いから勝つのです。
雇う方は雇われる方より強いのです。
ただ、長い目で見た時に、この出来事も私の魂の成長には不可欠のものであった、と今は考えています。
また、この時に私を馘首した営業部長ですが、その後、会社の吸収合併により、冷遇される状況に甘んじているということを風の噂に聞きました。
因果は巡るのでしょうか?
ただし東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、山梨県にしか対応していません。
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タグ:雇用契約